「農業利用区域」と「保全・林地化区域」を地域で整理−人・農地プラン
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2022/03/220307-57334.php
2022年3月7日の農業協同組合新聞より転載
農林水産省は、市町村が地域農業の将来のあり方について、農業者やJA、行政などで協議の場を設置し、農地の効率的な利用を図るため、「地域計画」を策定することを盛り込んだ農業経営基盤強化促進法などの改正案を今国会に提出する。JAが農業経営を行うための組合員の同意についてもハードルを下げる農協法改正も合わせて行う。
将来、地域で誰がどの農地をどのように担っていくかを決め、農地利用の集積化を図っていく人・農地プランの具体化を農水省は現場に働きかけてきたが、今回は「地域計画」として市町村が関係者による協議の場を設置して、地域計画を策定することを法律に位置づける。
ただ、担い手の高齢者と後継者不足が進むなか、「人・農地プラン」の策定について、全国の農地中間管理機構や農業委員会へヒアリングを実施したところ、「すべての農地をプランの対象とするのは困難」との意見が出た。これを受け、今回の法改正では、地域の関係者が協議して、「農業上の利用が行われる区域」と「保全等・林地化を進める区域」に整理を行い、農業利用する区域で「地域計画」を策定する。保全等を行う区域は、農山漁村活性化法の活性化計画の活用を検討するというのが大きな枠組みだ。
そのうえで市町村は、農業利用する区域について、その区域の農業の将来のあり方と農業を担う農業者ごとに利用する農地を定め「目標地図」として作成する。
地図の作成は、農業委員会が農業者の意向情報をふまえて、JAや農地中間管理機構(農地バンク)、土地改良区などの協力を得て行う。一筆ごとに農地関係情報を表示できるデジタル地図(eMaff)を活用する。
農地の「出し手」と「受け手」の年齢や意向、後継者の有無などをふまえて地図を作成するが、受け手がいなくなることが想定される地域ではJAなどのサービス事業体が受託や、中山間地域直接支払交付金などの活動組織なども活用する。
目標地図は10年後にめざすべき農地利用の姿を表示する。農水省は改正法の施行期日から、周知期間と合わせて3年程度の作成期間を設定する方針だ。
目標地図の達成に向けて、農地バンクは分散している農地をまとめて引き受けて、一団の農地として担い手に再配分する機能を発揮したり、所有者不明農地の利用権設定期間を20年から40年に引き上げる措置なども講じる。
また、農地を利用しやすくするため、農地の権利取得時の下限面積要件を廃止する。現行の下限面積は都府県50a以上、北海道2ha以上となっているが、すでに約7割の市町村が引き下げている。
JAが農業経営を行いやすくするための農協法改正も行う。現行では総組合員の3分の2以上の「書面同意」が必要だが、これを総組合員等の半数以上が出席した総会で3分の2以上が賛成すれば決議できるとする。
「地域計画」は「担い手」へ「農地」を集積させて農地の効率的な利用をめざすもので、どのような農産物をどう作り販売していくかを併せ持った計画にしていくにはJAの役割が欠かせない。JAグループは第29回JA全国大会で、将来の地域と地域農業の担い手を確保するため、既存の農家での積極的な事業承継のための支援と、農村の関係人口も視野に入れた新規就農者の育成など「次世代総点検運動」への取り組みを新年度が本格化させる。今回の法制度の改正を「実質化」する取り組みは、JAグループの運動に期待されるとともに、それは各地のJAの組織基盤強化にもつながるとの認識が大切になる。
令和4年3月8日(火)定例閣議案件
https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2022/kakugi-2022030801.html
農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(決定)
(農林水産省)
農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(決定)
(同上)
第208回国会(令和4年 常会)提出法律案
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/index.html
令和4年3月8日 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案
概要(PDF : 438KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-33.pdf
法律案要綱(PDF : 229KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-36.pdf
法律案(PDF : 316KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-39.pdf
理由(PDF : 127KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-30.pdf
新旧対照条文(PDF : 593KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-31.pdf
参照条文(PDF : 753KB)
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/208/attach/pdf/index-38.pdf
農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の概要
政府は3月8日、市町村が地域農業の将来のあり方について、農業者やJA、行政などで協議の場を設置し、農地の効率的な利用を図るため、「地域計画」を策定することを盛り込んだ農業経営基盤強化促進法などの改正案を閣議決定した。
農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の概要
背景
農業者の減少の加速化が見込まれる中、生産の効率化やスマート農業の展開等を通じた農業の成長産業化に向け、分散錯圃の状況を解消し、農地の集約化等を進めるとともに、人の確保・育成を図る措置を講ずることが必要
法律案の概要
地域計画の策定(人・農地プランの法定化) 基盤法
農地の集約化等 基盤法、機構法、農地法、農委法
人の確保・育成 基盤法、農地法、農協法
基盤法、機構法、農地法、農委法、農協法の改正の束ね法案。
金子農林水産大臣記者会見概要
https://www.maff.go.jp/j/press-conf/220308.html
令和4年3月8日(火曜日)8時58分〜9時11分 於: 本省7階講堂
(大臣から)「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」及び「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定について
(大臣から)「ウクライナ情勢に関する相談窓口」の設置について
(大臣から)「日経SDGsフォーラム消費者共創シンポジウム」の開催について
(大臣から)ホワイトデーにおける花贈りについて
小麦の価格高騰への対策について
農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について
ウクライナ情勢による貿易への影響について
冒頭発言
大臣
私から4点御報告がございます。1点目ですが、本日の閣議におきまして、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」及び「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。これらの2法案は、地域の農業者等による話合いを踏まえ、将来の農業の在り方等を定めた地域計画の策定や、地域計画の達成に向けた農地の集約化等の推進、農用地の保全等の取組への支援等の措置を講ずるものであります。これらの法律案によりまして、農地の集約化等を進め、生産の効率化等を通じた農業の成長産業化を図るとともに、農山漁村の活性化を図ってまいりたいと考えております。
(省略)
農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について
記者
冒頭ありました、人・農地に関する法案の件で伺います。法案の取りまとめの過程では、全国市長会が地域計画の策定義務化に懸念を示すなどしていました。改めて、地域計画の法定化のねらいや意義、市町村の現場で計画策定を推進するため、どのような対応を図っていくのか教えてください。
大臣
各地域におきまして、将来の農業の在り方等を定めた「地域計画」の取組を進め、農地が利用されやすくなるよう集約化を図っていくことは、待ったなしの課題であります。このため、各地域におきまして、地域の話合いにより目指すべき将来の農地利用の姿の明確化を図る、そうした話合いを踏まえまして、地域計画を策定する、これに基づき、農地バンクを活用した農地の集約化を進めるなどの取組を、今後促進していきたいと考えています。全国市長会の御懸念につきましては、市長会に対し、当省の考え方等を説明して理解を得たところであり、引き続き、現場に丁寧に説明を行ってまいりたいと考えています。
[農林水産省] 5月10日、参院農林水産委員会で農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案を可決⇒5月11日、参院本会議で可決⇒5月18日 、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律を公布
http://hazukinoblog.seesaa.net/article/460171005.html
2018年5月11日に改正農業経営基盤強化促進法が成立。
今回は農業経営基盤強化促進法改正案と同じ日に「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定しています。
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