2016年10月15日

ボブ・ディランに続くノーベル賞か…米国民的ロックスターが独白「鬱病30年超」「初エレキ日本製」 ブルース・スプリングスティーン自伝『ボーン・トゥ・ラン』の衝撃

ボブ・ディランに続くノーベル賞か…米国民的ロックスターが独白「鬱病30年超」「初エレキ日本製」 ブルース・スプリングスティーン自伝『ボーン・トゥ・ラン』の衝撃

【エンタメよもやま話】
ボブ・ディランに続くノーベル賞か…米国民的ロックスターが独白「鬱病30年超」「初エレキ日本製」 スプリングスティーン自伝『ボーン・トゥ・ラン』の衝撃
http://www.sankei.com/west/news/161014/wst1610140003-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/161014/wst1610140003-n2.html
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http://www.sankei.com/west/news/161014/wst1610140003-n5.html
2016.10.14 15:00

さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、昨13日にノーベル文学賞の授賞が決まったボブ・ディランにあこがれ続ける米国のロッカーが書いた、世界で話題の一冊についてのお話でございます。

 「ボス」の愛称で知られ、1973年のデビュー以来「明日なき暴走」(75年)や「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」(84年)といった大ヒットアルバムで日本でも団塊ジュニアより上の世代の音楽ファンには良く知られた米国を代表する硬派の国民的ロッカー、ブルース・スプリングスティーン(67)の初の自伝『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』(日本版は早川書房、上・下巻で各2400円+税 http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2016-09-05-131624.html)が9月27日に全世界で同時発売されたのですが、この内容がいろんな意味で感動的過ぎる&衝撃的過ぎると欧米を中心に、大変な反響を巻き起こしているのです。ちなみに日本に関係する意外過ぎる事柄も書かれているというわけで、今回の本コラムでは、この自伝についてご紹介いたします。

▼早川書房の『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』紹介ページ http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2016-09-05-131624.html(外部サイト)

ボブ・ディランの再来…高いメッセージ性の歌詞、文才あふれる自伝に「鬱は、じわじわと忍び寄ってくる」

 彼が初の自伝を発売するというニュースは、8月30日付英紙ガーディアンや9月14日付米紙ウォールストリート・ジャーナル(いずれも電子版)など欧米の主要メディアがこぞって大々的に紹介し、発売前から大きな話題になりました。

 09年のスーパー・ボウル(米アメフトリーグNFLの優勝決定戦)のハーフタイム・ショー出演の直後から書き始め、アルバム製作や長期のコンサート・ツアーの合間を縫い、約7年かけて書き上げたといいます。原書は508ページに及ぶ大作です。

 まず彼についてごく簡単に。

 1949年9月23日、米東部ニュージャージー州に生まれ、大手CBSレコードで、ボブ・ディランやアレサ・フランクリンを発掘した伝説的なA&R(新人の発掘・契約・育成などを行う担当者)、ジョン・ハモンドに見いだされデビュー。

 説得力ある力強いしわがれ声と豊かな表現力、物語性が極めて高く、映像が思い浮かぶような優れた歌詞で「ボブ・ディランの再来」と注目を浴びます。

 加えてライヴの凄まじさが評判を呼び、75年の3作目のアルバム「明日なき−」は米ロック史に名を残す超名盤に。

 その後も敬虔(けいけん)なキリスト教徒(カトリック)としての視点も交え、家庭に多くの問題を抱えた米東部の労働者階級の若者の暗澹(あんたん)とした生き様と、超格差社会で置いてけぼりを食らった彼らに明るい未来を提示できない米国が抱える矛盾などを世に問い、多くの名盤を発表。“米国の良心”とも呼ばれている偉大なロッカーです。

発売前から大きな話題になる理由は、前述したように「硬派の国民的ロッカー」による初の自伝であることに加え、歌詞の素晴らしさから“彼なら素晴らしい文章で自身の半生を綴るだろう”との期待が大きいからなのですが、この自伝、期待を大きく上回る内容です。記者も読みましたが、深い感銘を受けました。

 ハドソン川を挟んでニューヨーク・マンハッタンの隣にあるニュージャージー州中部の田舎町フリーホールドで、イタリア系の母親と、オランダ系とアイルランド系の血を引く父親との間に生まれた彼ですが、生活は大変だったようです。

 <今夜は木曜の夜、ゴミあさりの夜だ。おれたちは動員されて出勤態勢を整えている。祖父の一九四〇年式のセダンに乗りこみ、わが町の歩道にあふれるゴミの山をひとつ残らずあさりにいくのを待っている。まっさきに向かうのは、ブリンカーホフ・アベニュー。金持ちの通りで、ゴミも最上だ…>

 こうした極貧生活を送りながらも当人は<うちはかなり貧乏だったが、おれはとくにそう思ったことはない。服も、食べるものも、家もあった。もっと貧しい友だちは、白人にも黒人にもいた。両親には職があり、母は法律事務所の秘書を、父はフォードの工員をしていた…>と、こうした日々を意に介さない日々を過ごしていました。

 そんななか、6歳の時、テレビ(1956年9月9日のエド・サリヴァン・ショー)でエルビス・プレスリーのパフォーマンスを見て、人生が変わります。

 <7000万のアメリカ人がその夜、この腰振り人間地震にさらされた…エルヴィスの大きな愛の営みは国を揺さぶり…黒人の音楽文化を愛し、その芸術性と優秀性と力を認めて、それに精通することを願った…>

 さらに、今度は同じテレビ番組でビートルズと出会い、ロック音楽に見せられ、音楽で生きていこうと決意します。

 <おれの中で国家的ヒーローになっていたエド・サリヴァンが、もう一度やってくれた…ビートルズ…ビートルズ…ビートルズ…それは“生きているのを喜んでも罪にならない”という呪文。ロックンロールの歴史上、最悪にして最高に輝かしいバンド名。一九六四年の英語には、これ以上の魔法はなかった…>

 芸術的かつ的確な比喩(ひゆ)を多用し、幼少期から青春期の自分が置かれた貧困生活や退屈な日常、ロック音楽と初めて出会ったときの驚きや感動が端正な文章で綴られています。まあ歌詞があれだけ巧みで高いメッセージ性を有していますから、やっぱり高い文才があったということですね。

だがしかし。前述したように一家は極貧。ギター奏者をめざそうにもギターなど買えるはずもありません。彼は必死でアルバイトをして何とか18ドル(約1800円)の安物のアコースティックギターを買って練習に励むものの<バンドに入るには、ひと稼ぎするには、どこかへ行くには、エレキギターが必要だ>というわけで、エレキの購入に踏み切りますが、その下りが泣かせます。

 <エレキギターが必要だ。おふくろにそう説明した。またしても、わが家にはない大金が入り用になった…おれの部屋にちっちゃなビリヤード台があった…クリスマスに親父にもらったものだ…おふくろにかけあい、おれがそのビリヤード台を売ったら、足りない分はおふくろが捻出してくれることになった…>

 <おれは三五ドルでビリヤード台を売った…ぬかるんだクリスマスイブの日、おれはおふくろとともに(地元の楽器店の)ウィンドウ越しに、そのサンバースト塗装の、ワン・ピックアップの、ケントという日本製ギターを見つめた…>

 このエレキ<値段は六九ドル。小型のアンプもついている。店でいちばん安いギターだった…>のでしたが、彼はこう述懐します。

 <美しく、すばらしく、手ごろに見えた。おれは自分の三五ドルを、おふくろは金融会社で借りた三五ドルを持っていた。おふくろも親父も年中借金をしていて、返し終わるとすぐにまた借りていた。六九ドルというのは、それまでのおれの人生で最大の出費だったし、おふくろはまたしてもおれのために綱渡りをすることになるのだ…>

 どうですか? アメリカン代表のようなロッカーから、こんな浪花節の極致のような逸話を聞かされるとは思いませんでしたが、その後も本書は、スターの階段を一気に駆け上がるような華やかな成功物語の裏側に、血のにじむような苦労や努力があることを読み手に淡々と教えてくれます。

また、彼を発掘したCBSレコードの伝説的なA&R(新人の発掘・契約・育成などを行う担当者)、ジョン・ハモンドら、後ろ盾となる人々が退社した途端、2作目のアルバム「青春の叫び」(73年)が全くプロモーションされなくなったりと“大人の事情”に翻弄されたりもします。

 そんな本書なのですが、最も衝撃的だったのは、彼がマッチョになり“強い米国”の象徴でもあった「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」の発売前年の83年あたりから現在に至るまでの約33年間にわたり、何と鬱病で苦しみ続けていた事実を自ら告白していることでしょう。本書では、長く専門のカウンセラーが付いていた事実も明かしています。

 <鬱はいきなり襲ってこない。じわじわと忍び寄ってくる…抗鬱剤は気まぐれだ。59歳から60歳にかけてのどこかで、おれは服用していた薬が効かなくなったことに気づいた…><いつものように、ツアー終了後の軽い鬱が予想された…>などなど、鬱に苦しむ彼の姿が痛々しく伝わる描写が数多く出てきます。そしてさらに衝撃的なのは以下の一文です。

 <おれたちは病んでいる。アイルランドから来たわが一族の血とともに、様々な病気がもたらされたのだ…自分の歌のなかでおれは、親父をあまり公平にあつかっていない。横暴で家族を顧みない親の典型にしている。それはおれたちの関係を『エデンの東』風に焼き直したもので、おれの子供時代の経験を“一般化”しているにすぎない。おれたちの物語はもっとはるかに複雑だ。出来事がではなく、それらが起きた理由が。>

 この意味深な告白の意味が知りたい方はぜひ、本書をお読みください。常に社会的弱者の視点に立つ反権力のロッカーが誕生した理由を本書は見事に解き明かします。

とはいえ、そんなことよりも、あのスプリングスティーンも最初は本当に普通のロック少年で、お母さんと2人でエレキギターを買いに行って、手探りでギターと作詞作曲を覚え、さまざまなことに悩み、ぶつかりながらながらスターになり、世界的な成功を収めても鬱病と闘い続けていることが分かっただけで、われわれ凡人も少しだけ勇気がもらえる気がするのです…。(岡田敏一)

     ◇

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

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 ■毎週、日本を含む世界のエンターテインメントの面白情報などをご紹介します。ご意見、ご要望、応援、苦情は toshikazu.okada@sankei.co.jp までどうぞ。

▼早川書房の『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』紹介ページ http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2016-09-05-131624.html(外部サイト)


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ノーベル文学賞の授賞が決まったボブ・ディランにあこがれ続ける米国のロッカーが書いた、世界で話題の一冊についてのお話とのことです。
ブルース・スプリングスティーンが吟遊詩人として扱われ、ノーベル文学賞を受賞するようになったら、ノーベル文学賞の意味がなくなる。
ボブ・ディランの再来かも知れませんが、私は1980年代のMTVでヒットした「ボーン・イン・ザ・USA」とパティ・スミスが作詞し、作曲がスプリングスティーンの「ビコーズ・ザ・ナイト」ぐらいしか知らないです。






hazukinotaboo @hazukinotaboo2
村上春樹はなぜノーベル賞を取れない? 大手紙が指摘していた「いくつもの理由」 http://www.j-cast.com/2016/10/13280518.html … @jcast_newsさんから 「日本人作家では村上さんより、むしろ「水俣」をテーマとする石牟礼道子さんの方が有力なのではないかと思ってしまうほどだ。」





hazukinotaboo @hazukinotaboo2
村上春樹氏母校ため息「ボブ・ディランは歌手やろ」 http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1723921.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp … @nikkansportsさんから 「あの歌手のボブ・ディランかいな。文学ではなく、歌手やろ。名前を聞いたとき、ひっくり返りそうになった」と関係者の1人が話した。





hazukinotaboo @hazukinotaboo2
ボブ・ディラン「自伝」も受賞理由 朝日新聞に書評:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASJBF7799JBFUCLV02Z.html … ボブ・ディランのノーベル賞受賞の理由の一つに、2004年に発表した自伝「Chronicles」(ボブ・ディラン自伝)の存在が触れられています。



Bruce Springsteen - Born in the U.S.A


Because The Night - Bruce Springsteen




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ラベル:Bruce Springsteen
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