【特集】学校教師の実態とは
http://jpn-news.com/p/1162
Posted on 2012年8月7日 in その他 | by 記者壱号
大津の生徒自殺事件などからイジメの助長や擁護、あるいは、痴漢、援助交際などの性犯罪、さらには、学校の閉ざされた隠蔽体質──数々の報道から負の側面ばかりが目立ってしまう「学校」そして「教師」。かつては「聖職」と呼ばれた教師も、いまやその信頼は失墜し、児童・生徒および保護者からは冷たい目で見られるようになり、果ては「モンスターペアレンツ」と呼ばれる反教師の現代の亡霊まで生み出してしまった。昔のような、熱血溢れ、信頼できる教師はもういないのか?その実態を調査した。調査したのは、某県内に存在する1校の小学校と、2校の中学校である。コンタクトの取れる限り、教師から聞き取り調査を行った。なお、プライバシーと公務員の守秘義務との観点から、特定できない範囲内でのことをここに記すこととする。また今回は、義務教育に主眼を置いた。
3校のコンタクトの取れた教師に、次の質問を率直に投げかけてみた。
質問1)「教師」とは何か?
質問2)学校の問題点とは?
質問3)児童・生徒は昔とどう変わった?
質問1)「教師」とは何か?の質問に対し、中学校社会科教師の1人は、授業に関してこう答えてくれた。
「昔と比べて、教師は子どもと近い存在になった。それは、そうならざるを得ない部分があったから。昔は、教師と子どもという二者間で、教師が教科のことを教え込み、知識を注入する『知識注入型』の授業を行って十分授業が成立したんです。しかし、現代の学校ではそうはいかない。『言語教育の充実』が学習指導要領で加わったことで、子どもの間での『会話』が必要となった。また、1970年代に議論となった『子どもを主体とした教育』『問題解決学習※1』などがまた現在になって必要性を迫られるようになってきた。子どもを主体とした授業を展開していかなければならなくなったということなんですね。そこで、グループ活動や子どもどうしのディスカッション・話し合いを取り入れた新しい授業、というか、実は、これは学校教育が学習指導要領で定められる以前、戦前されていた教育とも通ずるのだが、子どもと子どもと教師、三者間での教育への切り替えをはかることになった。教師からの一方的な授業は、行ってはいけない。だから、子どもどうしで協力し合って授業を進めていくということが前提。そのため、教師の立場とは、あくまで子どもの『補助』なんです。」もしかすると、児童・生徒を積極的に牽引するのが教師であるという見方をする人が世間には多いかもしれない。しかし、教師のあるべき立場は、現代ではそうはいかなくなっているというのである。児童・生徒の「個性」を引き出す授業を行うべきであるという議論が90年代に頻繁に巻き起こったが、それと通じるとも思われる。児童・生徒の意見・発言を尊重した授業を行うのが教師であるという。ただ、これだと「教師が児童・生徒に授業を丸投げしている」「教師の責任はどこへ」との疑問が生まれる。これが教育に携わり先導する立場であってよいのかという議論になるわけだが、そのことについても、同教師は、意見をくれた。
「もちろん、子どもを尊重しつつも、教師は常に目を光らせていないといけない。子どもが間違った方向に行こうとしたとき──それは授業であれば、例えば、あるテーマについて子どもに話し合いさせているようなとき。テーマから逸れた話し合いが進んでしまうこともあり得るわけです。そんなときに、軌道修正するのが教師の役割。あるいは、それは学校の日常生活にもつながってくる。生徒指導は、子どものやりたいことをやらせてあげるのが一番だけれども、それじゃいけないときに必要になってくるわけですよね。はっきり言って、その線引きは難しい。こちらは大人だから何が正しいか間違っているかは判断がつくけれど、子どもだからそうはいかない。この子どもは回り道しても自分で考えさせた方がうまくいくのではないかと判断したら、自分で考える時間を与えるし、この子どもはきちんと言ってあげないと迷ってしまうと判断したら、助言する。その境界は、教師が常に子どもの発言や行動から、見極めていくしかないです。子どもの実態を把握していくのも、教師の役割ですね。」放任主義と指導は紙一重であるが、放任主義にならないようにするため、この教師は邁進している。それは、「線引きは難しい」という一言からも十分察することができる。決して、教師の責任を放棄しているわけではなく、教師の責任の中で、子どもの個性を引きだそうと努力している。
質問2)学校の問題点とは?の質問については、中学校国語科教師が詳しく説明してくれた。
「一番のネックは、部活動です。生徒の個性を引き出す、あるいは生徒自身に得意分野を見付け自信をつけさせるといった意味で、部活動はものすごく意義のあることなんです。しかし、そうならないのが現実です。○○(スポーツ)の強豪校なんて言われる学校ありますよね。あんなのは、教育じゃないんです。勝つための部活になってしまっています。勉強や学校生活の方が大切なのはもちろんなのに、それをそっちのけで、部活を推進する。そういう学校は、学校を挙げて推進してしまっているんです。何を考えているのだろうと思います。部活動はそもそも、学校でやらなくてもいいものなんですよ?教育基本法で『生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感』をはぐくめるものであればそれでいいという話なんですから。それを達成できないと学校が判断したら、べつに部活を置かなくたっていいものだと、法でも決まってるわけなんです。学校が率先してやらせるものではなくて、生徒が自主的に行うものなんです。部活動の縛りで、生徒の他の可能性を断ってしまうなんていうことは、言語道断です。学校で部活を推進して強豪校にする、そんなのは駄目なんです。」てっきり、近年言われ始めたモンスターペアレンツの問題や学習指導要領に関する不満が出るのかと思っていたら、答えは意外だった。スポーツの強豪校として名を馳せ、活躍している学校を目にすると、精力的に活動している学校だなと思いがちであるが、それではいけないという。目から鱗の回答だった。
教育の目標、それはすなわち学校の意義にもつながるが、教育基本法では、「第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」となっている。かみ砕いて言えば、学校は、「子どもの人格形成を行う場」である。もっというと、「学校は児童・生徒の人間形成を行う場」とすると考えやすいだろうか。たしかに、部活動だけに力を入れることでその達成は有り得ないと思う。かの教育者・福沢諭吉は、「自主独立の精神」という言葉を用い、学校設立の意義を著書『学問のすすめ』の中で言っていた。教養を身に付け、それを活かすことで人間は成長する。ここでは、部活動をめぐる教育の弊害が見てとれた。また、質問1での教師の回答のように、やはり生徒の個性を大切にしたいという教師の願いが垣間見られた。
質問3)児童・生徒は昔とどう変わった?については、小学校教師が簡潔に回答してくれた。
「昔の子どもは、教師は絶対でしたよね、まるで雲の上の存在みたいな風潮があった。聖職者だった。でも今は、子どもはフランクに教師に話しかけてきます。わざわざ、子どもにとって貴重な休み時間なのに、その時間に職員室に雑談しに来る子もいますよ。『敬語が使えないのは駄目』とかそういう基本的な部分では注意していますけど、子どもが教師に話しかけやすいようになったのは、自分ではいい傾向だと思っています。教師と子どもの距離が近くなるということは、コミュニケーションが取りやすい環境にあるということ。授業にも活きます。」「コミュニケーションが授業にも活きる」というのは、言語活動の充実※2に通じる部分であろうか。「今の子どもは挨拶ができない」「他の人のことを考えない子ども」など、2000年に入った時期から世間で騒がれるようになった。たしかにそれはもっともで、基本的な会話の能力が不十分であると思われる子どもの数は実際に増えている。そのことは、親子のコミュニケーションの機会が減っている環境に育ってしまった子どもが多くなっていることからも察することができる。もしくは、人との接し方がわからない子どもが増えていると言い換えることもできるであろうか。
第2節 家族のつながりの変化による影響(平成19年版国民生活白書)
http://www5.cao.go.jp/seikatsu//whitepaper/h19/01_honpen/html/07sh010201.html
(親子のコミュニケーションが減っていることがグラフからわかる)
教師と子どもが互いに親しみやすいことは、話す機会が増えることであるから、子どもにとって良いことであるのは名違いない。そして、同列だからこそ話せる内容というものもあるだろう。教師は、自ら子どもに歩み寄り、子どものための環境をつくっているのである。教師は、児童・生徒を一人前の人間に育てようとしている。もちろん、ニュースに出てしまうような犯罪をおかす教師もいるが、それはほんの一握りである。ほとんどの教師には、そのような偏見と逆境に耐えながら、児童・生徒を思う懸命な姿があった。ここで挙げた教師の回答に異論を唱えたい方もいるだろうが、サンプルから解釈を重ねた実態ということで了承願いたい。
(注釈)
※1 問題解決学習・・・生活での疑問や教師の発問などを元に、子どもどうしで議論し合って解決することで、教師が教え込むよりもより深い学習の成果を挙げることを目的とした学習形態。
※2 言語活動の充実・・・学校教育法第30条2「前項※3の場合においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない。」
※3 前項・・・社会の変化に対応できるような教育をする必要性のこと。平成17年に中央審議会答申で議論された。
ラベル:日教組
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