2012年06月19日

中国経済の失速、日本企業にも暗雲

中国経済の実態です。

有)宮崎正弘事務所 [メルマ!:00045206] より転載

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
   平成24(2012)年6月18日(月曜日)弐
         通巻第3686号
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 所得は十数倍、消費は四倍になったが生活満足度は横ばい
  貧困者の怨念が暴動の主たる原因ではなく、汚職、不公平への怒り
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 過去二十年間で中国の消費市場は四倍となった。過去三十年でGDPは30倍伸びた。ということは単純労働者でも都会へ出れば、平均月給1200元程度は稼げる労働市場があるということである。
 ネックは大学進学率の急上昇(12年度大卒は700万人もいる)、相対的にブルー・カラーの急減(猫も杓子も大学へ行くようになった)。だから労働現場などで人手不足に陥り、ベトナムやアフリカ諸国から、お手伝いさんはフィリピンからとなる(中国では大卒が現場労働をするのは稀)。

しかし賃金があがってもインフレも平行して昂進し、生活の苦しさはかわらず、たとえ中間層が肥大して多少、物質的に豊かになったとしても、幸福度は横ばいか、ちょっとだけ上向いた程度。
ルイビュートンやアルマーニが世界一売れるとしても、それで「幸福」が買えるのか、という議論になる。
経済成長した結果、中国人は果たして仕合わせになれたか?
 「繁栄と幸福との相関関係は証拠立てられない」という結論は南カリフォルニア大学のリチャード・イースターリンの調査による(英誌『エコノミスト』、2012年6月16日号)。

 「冨の不均等が主因とは考えられず、一日500件発生すると言われる暴動の不満の最大原因は不公平、権力の乱用、弾圧への反発であろう」とハーバード大学のマーチン・ホワイテが言う。

2004年の調査で「『五年以内に生活水準はもっとあがるか?』と聞けば、62%が『そうだ』と答えたが、2009年には、これが73%に増えた。生活水準向上には楽天的なようだ」(同マーチン・ホワイテ)。

 しかし、豊かさが続くとは限らない。
 遼寧省は2011年のGDP成長が17%を記録し(当該省のGDPは243億ドル、前年比34・4%増)、重慶の16・4%を抜いた。省別ではおそらく遼寧省が最高。その基盤は薄煕来時代(大連市長、遼寧省長を歴任)にできたというのも皮肉である。
(個人的体験からいうと大連の飲み屋の勘定は北京、上海より高い)。

遼寧省は大連の躍進が凄まじく外国からの投資はいまも急進カーブ、米国インテルは一万人の工場をつくった。省都の瀋陽も発展が凄まじく、旧満州時代の町並みは再開発で、景観が変わった。
ところが炭坑町の阜新は日本人開拓者が開発した石炭で潤う市街だが、年々歳々、石炭採掘は減っており、町には出稼ぎに沿岸部へ移住した若者が夥しく、年金生活の人々が居住者の三割となった。
激しく地域が老齢化しているのである。

 北朝鮮との国境に近い通化市は大きな鉄鋼企業があったが、国有企業の再編により、業務圧縮、失業が町に溢れ大暴動となった。
こうみてくると地域別のアンバランスも目立つ。


 ▼日本企業に甚大な影響が出はじめている

 温家宝首相は三月全人代で「「7・5%成長」を標榜したが、中国経済の落ち込みを目撃して前言をさっと撤回し、「やはり8%成長で行こう」とした(保八路線の確認)。
追加の財政出動は日本円換算で26兆円。2008年リーマンショック直後のそれの半分以下である。

だが、これにより原発、新幹線、空港建設など凍結されたプロジェクトが軒並み復活した。景気梃子入れに財政を出動させ、赤字国債を躊躇わず発行するのである。
 そして中国と密接な貿易、提携関係にある日本企業に『被害』が目立つようになった。
第一に不動産バブルの破裂にともない、住宅が売れず、不動産価格の値下がりの悪影響だが、住宅在庫の積み上げ分だけでも北京で16万戸、上海で12万戸。北京のマンションは80平方でおよそ2200万円前後だが、これは平均年収の数百年分にあたる。

 日本勢は丸紅、三井不動産なども進出したが大和ハウスは蘇州で900戸の分譲マンションを販売、成約率がやっとこさ、80%という。

 蘇州の手前、昆山からは台湾企業の集団撤収が開始されている。昆山は新幹線も停車するほどの工業団地だが、目玉の台湾企業が魅力を感じるほどの労働力が不足している証拠であろう。
▼コマツも大和ハウスも三井不動産も。。。。。

 第二に建機健材だが、鋼鉄、セメントのおちこみばかりか、中国でウハウハ景気だったコマツも40%弱の販売減だ。
 日立建機などは鉱山開発ブームを当て込んでの大型ブルドーザに需要拡大を見込むが、すでにレアアースで米国、ベトナムへ供給先を多角化した日本など、需要増期待は日々薄らいでいく。

 第三に特別に奨励されてきた自動車製造に頭打ち気配が濃厚となった。
乗用車が売れない。そのうえ、上海では月に6000台しかナンバープレートが交付されないため、闇のナンバープレートが300万円以上する。通常でも80万円をださないと車は車庫に眠ったままになる。

一時期は幸運ナンバー、たとえば8888とか、7777はプレミアムがついて、300万円前後で取引されたが、それもいまは昔話。
 あおりを食ったのは富士重工で、ついに中国進出(現地生産工場、年産5万台規模)に許可がおりなかった。

 第四は消費の落ち込みだが、スーパー、コンビニの話ではなく、ビールに的を絞っても、青島と合弁のサントリーは、上海と江蘇州に進出するが、青島はアサヒビールとも提携して中国国内のシェアを伸ばそうとしているため利潤は二の次になっている。
嘗て400社あった中国のビールは大手数社に再編されており、買収合併を繰り返したSABミラー(英国)が華潤雪花と組んで首位。ついでアサヒ・青島、三位がアンハイザー・ブッシュ(ベルギー)。独自ブランドで味では最高と評価される燕京ビールは第四位のシェアとなっている。
中国経済の暗転は加速されているようである。

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ラベル:中国
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posted by hazuki at 08:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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